キャラかみ 第54回

character no kamisama

ゲームに“キャラクター”という形で命を吹き込んでくれる絵描きさんに、込めた思いを訊く本コーナー。今回は長く『メタルマックス』シリーズのデザインを担当されている山本貴嗣さんの登場です。

今月の神サマ!▼


山本貴嗣さん

Profile

漫画家、デザイナー。1978年に漫画家としてデビューし、「最終教師」「エルフ•17」「セイバーキャッツ」「剣の国のアーニス」など多くの作品を手がける。そのほか馳星周「淡雪記」などの小説作品で挿絵も手がけ、『メタルマックス』シリーズではキャラクターデザインを数多く務める。

イラスト、漫画を描くようになったキッカケは?

幼い頃から字と絵が好きで、祖父にせがんで字を習ったり絵を描いたりしてました。漫画家になりたいと思ったのは小学校の時です。中学校でミヤ王こと宮岡寛氏(※注1)と友人に。当時は漫研がなかったので文芸部でSF同人小説を描いたりしてました。漫画は完成作品ではなく断片的なものを描いてました。

高校でもミヤ王氏と同じ文芸部でした。ミヤ王氏は漫画もけっこううまくて鉛筆描きの合作漫画を描いたりもしましたし、一度はインクで清書した合作漫画を別冊マーガレットに応募したりしました(笑)。漫画賞への応募は人生であれ一度きりですね。

漫画家になるには東京に行かねば、と東京の大学に入学したのは1977年のことです。そのとき、有名な原作家の小池一夫先生(※注2)が劇画村塾第一期を開催されまして、ミヤ王氏もさそって応募、入学しました。同期には狩撫麻礼氏(※注3)、さくまあきら氏(※注4)、高橋留美子氏(※注5)などもおられました。週に2回くらいでしたか、大学の授業が終わった夕方以降に講義があったので駆けつけたものです。その後19歳で漫画家デビュー。大学と二足のワラジをはきながら執筆し、卒業後はそのままプロになって今年で35年、この道で暮らしています。

ミヤ王氏はその後、ライターなどを経てゲームデザイナーになり、『メタルマックス』1作目のキャラクターデザインをしないかと声をかけてくれました。それまでファミコンすら触らなかった私が、ゲーム関係の仕事もするようになったのはそれがきっかけです。完成品のソフトが届いたときは、仕事が終わった後アシスタントと交代で3日がかりくらいでエンディングまで行きました(今は数時間でコールされる達人もおいでですが、当時はとにかく手さぐりで)。終わったときは感動しましたよ。おべんちゃらではなくミヤ王氏を尊敬感謝しました(笑)。こんなステキな仕事に誘ってくれてありがとう、と。

『メタルマックス4』メインキャラのコンセプトは?

ヒナタもズキーヤも芯があって繊細さとタフさを兼ね備えたキャラですね。「大破壊」後の世界はモラルや道徳が崩壊し、善悪が今以上にあいまいですが、とりわけヒナタはそんな世界でも「性根が腐ってない」少年と思って描いています。

特殊なキャラはサーシャですね。彼女はアンドロイドで、人間のような感情を伴ったエゴがない。高度な知性と膨大な知識を持ち、人間も世界も広い視点で見ています。いい意味で成熟した大人は、子供が感情的になったり逸脱した行動をとっても同じレベルでケンカしたりせず、慈愛を持って暖かく見守り導くでしょう。サーシャはその究極形態です。戦う無宗教のマザーテレサと言っては語弊がありますかね(笑)。もっとも、これらはあくまで私の考えですので、ミヤ王氏にとっては「ちょっと違う」という部分があるかもしれません(笑)。

漫画でのキャラクター作りのホンドは?

抽象的な設定(「いい人」とか「冷たい人」とか)ではなく、具体的なセリフや行動が個性的に示せるか、がポイントだと思います。例えば、今2人の人物の目の前でかわいい動物が残酷に殺されたとします。その反応が「ひどい」「かわいそう」とかなら、その他大勢の群集でも言えます。何のキャラにもなってません。しかし1人が、結婚式間近の白い新しいウェディングドレスのまま駆け寄って血で汚れるのもかまわず遺骸を抱き上げたらどうでしょう?また別の1人が、笑いながら手もとの納豆をかきまわしていたらどうでしょう?ひと言のセリフもなくとも、おおよそどんなキャラか感じるものがあるでしょう。それがキャラクターを立てるということで、小池先生に教わった基本にしてある意味奥伝に通じるポイントでもあります。ただ、気をつけないといけないのは、印象深い言動をとらせようと夢中になり過ぎて、ただ奇をてらうだけの特徴を作ってしまうことです。

キャラクター作りで一番大事だと思うことは?

お客様が「こいつの幸せになるところを見たい」と思ってくださるか、「こいつの不幸になるところを見たい」と思ってくださるか、あるいはその両方か。失敗なのはにいつどーなってもいいや」と思われること。テレビで言うならチャンネル変えられちゃうわけですね(笑)。ただ、人間の好き嫌いは計算では量り切れません。どんな人気のタレントやスターでも、アンチもいれば興味ない方もおいでなわけで、ようはその人数割合をどうできるか、だと思います。とてもとても難しいです(大汗)。


敵キャラデザイン原案

敵キャラのデザインのポイントとしては「ダジャレ感覚」でしょうか。あと私は人を驚かしたり「イチビリ」(※注6)が好きなので(笑)、「うわー、してやられたなあ」と笑っていただけるようなサプライズが作れたらいいなと。一方で、「ここはこうしてほしい」という期待には応えたい。「期待は裏切るな、予想は超えろ」という言葉を心がけるようにしています(山本さん)

ズキーヤ 初期デザイン案

改めて当初の没バージョンを見ると。ズキーヤはやっぱり決定稿の方がいいですね(山本さん)

メインイラスト(左よりヒナタ、サーシャ、ズキーヤ)
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バイクに変形する女アンドロイドと主人公の少年という設定は、ミヤ王氏とスタッフからのご依頼です。決まっていなかったのはサーシャの向きで、仰向けかうつ伏せか。これまでにも女性メカの変形したバイクというのは漫画やゲームでありましたが、どうせ作るなら見たことの無い形にしたかった。結局、色っぽさという意味だけでなく、ヒナタとサーシャの絆を表現するにも、仰向けがいい、となりました(山本さん)

サーシャバイク デザイン案

サーシャバイクのイメージは初期からある程度固まっていたのがおわかりいただけると思います。球形タイヤ版は途中で悩んで提案したのですが却下されました。フォルムはかなり好きなんですが(山本さん)


神サマ教えて!7っのショートQuestion

1.人生で初めて描いたイラストは?

幼い頃、祖父が教えてくれたカニの描き方が、記憶にある最古の自分絵です(本当はもっと以前のものがあるんでしょうけど忘れました)。□の中に✕描いて、その両側に「へ」の字を8つ。□の上に「F」2つ、向かい合わせに描きまして、その中間に「I」2本。これでカニさんできあがり♪

2.好きなエラストレーター・マンガ家さんは?

尊敬する方はたくさんおりでですが、好きな人を1人と言われれば、アメリカの漫画家リチャード•コーベン(Ricard Corben)(※注7)です。CGなどまだ存在しない70〜80年代にエアブラシを駆使して、独特のデフォルメがなされたキャラに超リアルな質感を加え、誰も真似できない世界を描いていた人です。若い頃その作品群には大いに影響を受け、ライティングの妙など学びました。

3.好きなキャラクターは?

映画では勝新太郎さん(※注8)の「座頭市」。漫画では、私は人の子より自分の子で(笑)、自分の描いたキャラが一番好きです。どれか1人と言われると迷いますが、最近では「笑うカドルス」(※注9)のカドルスも、かなりお気に入りです。実在の人物では釈迦とかありますが、これは別の話ですよね(笑)。

4.今まで遊んだ中で一番好きなゲームは?

『メタルマックス』シリーズが一番ですが、それを置くなら『トゥームレイダー」シリーズ。最初はかなりやりこみまして、4作目くらいまでやりました。

5.今遊んでいるゲームは?

3DS『メタルマックス4』!♪

6.この仕事をしていなかったら?

学生のころ通信簿ではいつも協調性の点数が悪く、卒篥してから今日まで毎日決まった時間に寝起きできない私がどんな職業につけたか謎ですが。でもお勤めをしながら同人漫画を気楽に描いているパラレルワールドの自分というのは想像することがあります。コミュニケーション能力はそこそこありますので、ある程度は周囲に合わせて暮らしていけたとは思います。あくまである程度は、ですが(笑)。

7.最近感動しまことを教えてください。

暑い日ざしの照りつける歩道でバス待ちをしてたら、きれいな緑色したカマキリがアスファルトを這ってきました。「踏まれるといけないからこっちへおいで」って、ちょうどこのインタビューをプリントした用紙を差し出したら、まっすぐ這い登ってくれたので、緑の草木の一角に運んで放しました。こうした日常の一期一会の命の触れ合いがしみじみ感動します。「いいことをした」とか「してあげた」とかじゃない、あくまで列対等な一瞬の触れ合い。心地よい命の風に吹かれるとでも言うのでしょうか。「会えてうれしい、光栄です。好い一日を、お気をつけて」と別れます。


注1:ゲームクリエイター。ミヤ王という愛称は週刊少年ジャンプでフリーライターをしていたときの名前。
注2:漫画原作者、脚本家。代表作は「子連れ狼」など。劇画村塾は漫画家や原作者を養成する塾。
注3:漫画原作者。「迷走王ボーダー」「ハード&ルーズ」などが代表作。
注4:ゲームクリエイター。代表作は「桃太郎電鉄」シけーズ。
注5:漫画家。「うる星やつら」「めぞん一刻」などヒット作多数。
注6:関西方面で使われる言葉で、ふざけるといったニュアンス。
注7:アメリカのコミック作家。
注8:俳優。座頭市は盲目の侠客が悪人を斬り倒す、勝新太郎の当たり役。
注9:「メタルマックス4 Limited Edition」に描き下ろされたオリジナルコミック。

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