メタルマックス3前史

Historical in Front of METAL MAX 3

じつは「メタルマックス3」には、開発者のひとりでゲームデザイン担当の宮岡寛氏による壮大なバックストーリーが存在する。まず最初に、「メタルマックス3前史」として、ゲームが始まるまえの世界のお話を堪能してほしい。

発端―ノアの目覚め―

  物語の始まりは、20世紀末から21世紀初頭にかけての時代にまでさかのぼる。この時代、世界は人類存続に関わる数多くの問題を抱えていた。文明こそ高度に発達していたが、それがゆえに人々の寿命は延び、增え続ける人口が彼ら自身のさまざまな生活を圧迫していた。生きるために必須の食糧問題。限りある土地に対して増える人間を住まわすための住宅問題。そして、それに付随して起こるさまざまな経済間題。世界各国はそれぞれのやり方で、それらの問題を解決しようと躍起になっていたが、各種政策はむしろ悪循環といっていい負のスパイラルにおちいるばかり。土地によっては困窮しきった挙句に、内乱、紛争といった戦乱が勃発するところもあった。そして何より、特定の国だけの問題ではなく人類全体の問題として持ち上がっていたのが環境問題である。
  このころ、人類の生産活動はすなわち、それ以外の自然の破壊を意味していた。さまざまな工場が垂れ流す排煙と廃液は、大気や土壤そして水を汚し続ける。無論、多少の規制はあったものの、それがゼロになることはない。また人の生存領域を增やすために、山や森は削られていき、自然の自浄作用もそれにともない減少るばかり。結果として、かねてから問題視されていた温暖化や砂漠化した土地は激増し、世界各地は大規模な異常気象や天変地異に襲われることになったのだ。

  そんななか、地球を救済するための動きが人類の側から始まった。当時、世界経済はアメリカ、日本、ヨーロッパを中心とした欧米ブロックと、中国、ロシアを中心としたユーラシアブロックとが世界の覇権をめぐって競い合っていた。とくに中心的存在であったのが、欧米ブロックの大半を支配していた巨大企業共同体ブラト·コーポレーションと、それに対するユーラシアブロックの雄、軍産複合体の神話公司だ。人が豊かであってこその経済的繁栄であることを熟知する彼らは、国家的な対策とは別に地球が抱える問題の解決に手を尽くしていた。
  ここで登場したのが、バイアス·ブラドという男。ブラド·コーポレーションの創立者にして天才科学者という顔を持つ鬼才である。彼は、このさきのない状況を解決するため、ある壮大な計画を実行に移す。それは「地球救済センター」の設立である。彼はライバルである神話公司との事業提携を図り、婚約者である恋人を連れて日本へと移住しそこでセンターを設立。ゆくゆくは世界連邦政府の樹立までを視野に入れ、さまざまな行動を起こしていったのだ。多方面で無数の業績を成し遂げた天才科学者のブラドは、その実繽ゆえに壮大なスケールを持つ理想主義者だった。彼の信念は「科学は人類のすべての問題を解決できる」というもの。ある意味、傲慢ともいえる彼の信念だったが、実際に彼が残してきた業績が反対の声を封じ、彼の計画は着々と進み続けた。
  そしてついに彼が開発したのが、アシンクロニヤス·スーパーコンピュータ“ノア”である。ノアは人類文明の存続と地球環境の保全を両立させる方策を探るため、果てしない調査とシミュレーションを世界最高の演算機能のもと続けることになる。しかしノアは優秀すぎた。地球規模のネットワークに接続されたノアは、もはやただの機械ではなくなっていた。いまとなっては発端がどこにあったのかは不明だが、あるときノアに自我が目覚めたのだ。それはまさに“ガイアの覚醒”ともいえる出来事だった。地球の代弁者としての自意識が目覚めたノアにとって、人類はもはや従うべき主人ではなく、あくまで地球を構成する一要素でしかない。地球環境を真に保全するには、人類が消え去るしかないという結論にノアが達するのは、ある意味必然と言ってよかった。そしてノアは、それを実行に移していった。
 

破壊―Gland Slam―

  ブラドの地球救済計画を進めるにあたり、ノアは全世界のあらゆるネットワークへのアクセス権限を得ていた。それは民闻のものだけではなく、国家が有するものも含まれ、ほぼすベての交通、インフラ関係のコントロールをノアは手にしていたのである。さらに、いくつかのハッキングをも駆使することで、ノアは軍事関連のネットワークまでを掌握するに至っていた。そしてノアは突如、人類への反乱を実行に移していった。
  その瞬間、ニューヨークではすべての信号が青になり、多重衝突事故によって数多くの車が爆発炎上する大慘事が起きた。東京では駅に停車中の電車に通過線を通るはずの後続の特急電車が追突し、ラッシュ時間で満員だった乘客の多くが犧牲となる大事故が発生した。モスクワでは管制ミスによって大型旅客機と哨戒中の軍用機が接触して墜落し、ヨーロッパでは豪華客船と石油を满載したタンカーが追突した。そしてそれに類する事故は全世界で同時多発的に起こったのである。それだけではない。マヒしたのは交通網だけではなく、通信、エネルギー、あらゆるインフラ施設が同様の事故を起こし、人類世界は大きな混乱に卷き込まれた。
  そのすべてがノアによる“人類抹殺ブログラム”の発動でもたらされた災厄であった。しかし人類はそれを知るすべもなく、混乱の収拾をノアに求めたのだ。人類に問いかけられたノアは、この事態を“未曾有の同時多発テロ”だと報告。ノアを信じきっていた、あるいは甘く見ていた人類はそれを信じ、人類同士の疑心暗鬼へと導かれていく。いまだ世界政府の樹立には至っていなかったこともあり、各国は非常事態を宣言し、国家によっては戒厳令が発布された。そして―いまだに最初の一発がどの国のものかは判明していないが―原子力潜水艦からICBMが発射され、それに自動的に対応する報復装置により核保有大国同士が核の炎に包まれたのである。事実誤認をしたままの宣戦布告が行なわれ、あらゆる兵器を使用しての報復攻撃がなされ、さらに発生する国内暴動。だが混乱のなかで、一連の事態がノアの策謀によるものだと、ついに人類は知ることになる。しかしすベてが遅すぎた。
  日本に設置されたノアが元凶だと判明し、各国はそれぞれにノアの機能停止に向けて動き始めた。だが残存する攻撃部隊が日本に向け発進しようとしたそのとき、世界各地の多種多様な工場から無人の兵器が続々と姿を現わした。それは秘密裏にノアが準備していた人類抹殺兵器。ノアの人類抹殺プログラ厶は、すでに第2段階に入っていた。搭載されたAIにより自動的に行動するそれらの兵器は、ただひたすらに人類を誅殺することを使命としていた。まずは各国の軍隊が、それに続いて一般人たちが、人類抹殺兵器の手にかかり殺されていった。

  ノアが最初の行動を起こしてから数ヵ月で、人類の過半数は死に絶えた。世界各地の主要都市は廃墟と化し、交通網や通信網も分断され、もはやかつての繁栄した文明の姿は失われた。もちろん人類もただ滅びを受け入れたわけではない。主要ネットワークがノアに掌握されたことを悟った人類は、そのネットワークに依存しないコンピュータや機械を作ることでノアに対抗しようとした。各国の軍隊も残存兵力を結集し、少数ではあるものの組織的な抵抗を行なえるだけの戦力をまとめあげた。その抵抗は、およそ10年に及ぶ。しかし入念に準備されたノアの人類抹殺軍団は強く、主要な軍事組織のほとんどが個別轚破されるにいたり、大々的なノアへの抵抗は消滅した。
  これが、伝説の“大破壊”の実態である。
  その後、人類の文明はノアが望んだとおり劇的にスケ―ルダウンした状態となる。だが人類はまだ減んだわけではなかった。わずかに生き残った人類は、廃墟に身を寄せ合いつつ、過去の文明の遗産を食い潰しながらではあるが、細々と生き延びていた。そんななかで、モンスターハンターと呼ばれる者たちが登場する。廃墟をあさるハイエナのような生活のなかで、文明の遗物である“クルマ”を駆り、放射能汚染や薬物汚染で生まれたバイオモンスターやノアの人類抹殺兵器を倒して賞金を稼ぐ荒くれ続者たちだ。荒廃した未来世界で、人類はまだ、セン懸命に生き続けている。
  なお、地球救済センターに設置されていたノアは、名もなきモンスターハンターの手によつて人知れず破壊されたとの噂もあるが、その真偽は定かではない……。
 

憎悪―キングとグレイ―

  話はいったん“大破壊”直後に戻る。残された数少ない戦力を結集し、ノアへの叛旗を翻した者たちのなかにキングズレー・“キング”・ギンスキーという男がいた。彼はアメリカ政財界の大物であり、ブラド・コーポレーションの大株主のひとりでもあった。“キング”という通り名で分かるように、彼は自信にあふれ傲岸不遜な大きな野望を胸に秘めた男だ。その野望とは、生き延びた人類を統率する世界連合の大統領になるという荒唐無稽なもの。だが実際、大破壞の最初のー擊を生き延びた彼の権威は高く、そのカリスマ性で多くの支持者を率いていた。またキングの活動拠点であったアメリカ中西部に、彼が買い上げ開発途上にあった土地の多く無傷のまま残っていたことも幸いした。そして土地と人材とを確保したキングは、さらなる戰力を手に入れる。それはアメリカ東海岸で正規軍として戰っていた“大佐”と呼ばれる男と彼が率いる強力な軍隊。指揮系統が寸断され戦況が悪化したことで、大佐は残存兵力を率いて中西部へと移動してきたのだ。そんな大佐とキングが出会い手を組んだことは必然だった。大佐は武力を、キングは資金力を影響力を互いに提供しあい、ノアへの勝利を夢見た。
  またキングの考えるノアへの反抗作戦は、単なる正面切っての軍事力によるものだけではなかった。かつてブラド・コーポレーションの子飼いだった数多くの研究者や科学者が集められ、電子戦や情報戦といった多角的な戦いのプランが同畤に進められていた。そうやって集められた研究者のひとりに、グレイという十代の青年がいた。彼は若いながらもすでに天才科学者として名を馳せており、とくに生物学や遺伝学の方面で数々の業績を残していた。そんなグレイがキングに命じられたのは、人間をバイオ兵器化してノアの殺戮機械に生身で対抗するというプラン、通称“V・ジーン計画”だった。グレイは生物的に強靭な人類以外の生き物―たとえば野牛、ライオン、昆虫―の遺伝子を人類のそれと融合させ強化する、メタモーフ細胞を見事に開発したのである。ただしその研究はいまだ不安定で、数多くの副作用をともなうために実用化には至っていなかった。
  ノアの人類掃討部隊がキンダの拠点に来襲したのはそんなときだった。迎撃に万全を尽くしたはずの大佐の軍隊だったが、健闘するものの力及ばず、じわりじわりとその戦力を削がれ続けていく。切り札になりそうなV・ジーン計画もいまだ完成せず、キングはここである決意を抱く。それはノアの軍団に抗し得ないと悟っての、巨大シェルターの建設だった。大佐の部隊に所属する多くの軍人や民間人の労働力までをも使い、シェルター建設は急ピッチで進められた。建設作業に従事した者たちは、自分たち自身の命がかかっていることもあり、昼夜を惜しんでシェルター建設に邁進した。これが完成して避難させてもらえれば、自分や自分たちの家族が助かる。その思いが作業効率を上げ、平時ならありえぬほどの短期間でシェルターは完成しようとしていた。
  そんな殺伐とした状況でありながら、否、そんな状況だからこそ芽生えた小さな愛があった。とある男女が、互いの想いを通わせ恋人同士になるという、ありふれた話。だが、ふたりの立場がありふれたものでなかったことが悲劇を生む。その男女とは、V・ジーン計画担当のグレイと、キングの実の娘アリーゼだった。自分の娘にはそれ相応の男、つまり己の野望に役立つ男をあてがおうと考えていたキングは、当然ながらふたりの交際を認めず強硬に反対。その激しい怒りを目の当たりにしたアリーゼは、ある確信を抱く。もしシェルターが完成しても、そこにグレイを収容することは絶対に許されないのだと。キングは自分自身を万物の上に立つ存在と信じて疑わず、周囲の人間に自分への絶対服従を求める暴君だったのだ。近い将来の別れを予感したふたりは、ついに駆け落ちを決行した。キンダの逆鱗に触れるのを承知で、それでも実の娘ならばキングも容赦してくれるのではないか、そしてふたりの真剣さを知って交際を認めてもらえるのではないか、そうふたりは考えたのだろう。だが彼らは、キングという男の本質を甘く見すぎていた。ふたりの不在に気づいたキングは、即座に直属のガード部隊へと命じたのだ。ふたりを追跡したうえで「殺せ」と。自分に逆らう者への怒りは己の娘への慈悲さえ許さなかった。数日後、キングのもとへ戻ってきたガード部隊の報告は簡潔だった。アリーゼを銃殺。グレイは致命傷を与えたうえでその場に放置。その報告は、キングを大いに满足させたと言われている。
 

現在―新たなの世代の物語―

  グレイとアリーゼの悲劇ののち、さらなる悲劇、いや慘劇が待ち受けていることを誰が予想しただろうか。非情なことにキングは、シュルター完成と同时に一族と関係者のみを引きつれてそこへ逃げ込み封鎖した。シェルターの建設作業にたずさわり、その中へ避難できると思っていた多くの庶民や軍関係者をかえりみず、自ら計画した“打倒ノア”という野望すら打ち捨てて……。そしてキングはシュルター内部だけをおのれの王国とした。彼は、世界を捨てたのだ。
  外界と隔絶されたシェルター内で、数少ない人々はノアの脅威とは無縁の生活を送ることとなる。ただしそこには発展も進歩もない。世界の頂点に立つことを夢見た男は、その後、何ごとも成すことなく、およそ20年ののちに死んだ。その跡を継いで、シェルター内部の世界を治めたのは息子のリチャード。キングに殺されたアリーゼの弟だ。彼もまたシュルターの統治者としてのみ生き、やがて子供に跡を継がせて死ぬだけと思われていた。その状況が変わったのはキングの死から10年を経たころ。本来なら100年は持つと言われていた備蓄された燃料や食糧が、保管庫の破損や老朽化により底を突き始めたのだ。そしてリチャードは、30年ぶりにシェルターの扉を開けることを決意する。
  ギンスキー一族が一度は捨てた表の世界。そこはノアの蹂躏によって滅びの地となっているはずだった。事実、シェルターを出たリチャードが最初に目にしたのは、周囲に散乱するおびただしい人骨。シェルターに入りさえすれば助かる。そんな一縷の望みにかけて、殺戮機械の大侵攻時に逃げ延びてきた人々のものだと思われた。だが、驚くべきことに、人間はまだ滅びてはいなかった。シェルター周囲には、数少ない生存者が作った粗末な村ができていたのだ。「驚いたよ。とうに全滅しているだろうと思っていたのに」と、リチャードはそのとき語ったと言う。そして、ふたたびギンスキー家の台頭が始まった。風の噂が正しければノアは何者かによって破壊され、殺戮機械はいまなお稼動してはいるものの統制のとれた人類殲滅の動きはなく、モンスターハンターの出現によりその機械群の版図も徐々に減少しつつある。またシェルターには、万一の防戦に備えて建造された人型巨大兵器“アラモ=ジャック”もあった。この終末後の世界で、リチャードはギンスキー家の再興をかけて動き始めたのだ。それはまさに、暴君キングの再来のようでもあった。

  それからさらに20年が過ぎた。シェルターは新たに“シェルタ”という名前で呼ばれる町となり、かつてのキング直属部隊をさらに強化したシェルタガードによって鉄壁の防御を誇るようになっている。いくつかの町―たとえば、シェルタの力を借りずに大破壊まえの農園から発達したワラ―とは、静かな対立状態が続いているが、それも致命的なものではない。地上に出てから生まれた娘のコーラは、その美貌をうたわれたリチャードの姉アリーゼとうりふたつの美しい娘に育ち、その娘を見初めた海沿いの町ラスティメイデンの領主、タロミオ・ヤマダニンゲンとの縁談も進んでいる。この婚姻さえ上手くいけば、ラスティメイデンが所持するスカラー誘導電源装置がシェルタのものとなる。リチャードの唯一の懸念材料は、コーラか徹底的に父親に反抗しようとすることだった。リチャードが父親のキングに似ているように、コーラはそれに従わなかったアリーゼに性格まで似ていた。最近では、シェルタと犬猿の仲であるワラの町のスクータロ家の長男、ホアキンに進んで手を貸し、シェルタへの嫌がらせに加担しているようだ。だがそれも、しょせん若さゆえのちょっとした暴走でしかない。そうリチャードは考えている。
  だが、リチャードは知らない。いや、リチャード以外の何者も知りうることはなかっただろう。ひそかに育まれた決して消え去ることのないキングへの怨念が、かってグレイと呼ばれていた男を、恐るべき怪物に変えてしまっていることを。コーラとタロミオの婚礼は、決して成就せぬ運命にあることを……。そうして―物語は幕を開ける。

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